土屋さん:それは面白いかもしれないね。ショコラだけではなくてさ。それこそチーズともあるしね。食とのマリアージュもあると思うしさ。そういうプロはいくらでもいるから。チーズプロフェッショナルはほとんど女性ばかりだし。それこそ紅茶とも出来るわけで。
K:紅茶ともですか?
土屋さん:紅茶のインストラクターに頼まれてセミナーをやった時に、ティーインストラクターが一番面白がるのは、紅茶を例えばワインに例えるとどうなるかとか、モルトに例えるとどうなるかとかだよね。紅茶の世界で有名なラプサンスーチョンというのがあるんだけれど、ラプサンスーチョンという元々俺達マイケル・ジャクソンの「モルトウイスキーコンパニオン」の中に、ラガヴーリンを称して彼が‘ラプサンスーチョン’と書いていたの。その時俺はラプサンスーチョンの事を知らなかったから、「ラプサンスーチョンって何だ?」って聞いたら「お茶」だと。でロンドンにいた時だから、トワイニングへ行ったら、なるほど本当にラプサンスーチョンって紅茶が売っている。そこで実際買って淹れてみたら、全く正露丸の様なのね。
K:ええ。
(※ラガヴーリンの名物所長だったマイク・ニコルソン氏と(1996年))
土屋さん:香りが非常に豊かであるという事。それは重視しているし、それから飲んでいて刻々と変化していく複雑さを持っている事も大事だと思うし、最後にスモーキーなところがあれば良いなと思うけれども、これは難しいわね。
K:はい。
土屋さん:そうするといつも飲むものは何だろうとなると、やっぱりそうね。2回に1回はアイラモルトになっちゃうわな。
K:そうですね、はい。有り難うございます。
Q7:お陰様で今回の土屋さんのインタビューで4回目となりまして、皆さんに伺っている事で「私はBarとウイスキーについて感動した出来事があります」が、土屋さんは何かございますか?
土屋さん:何だろうな。
K:一言では中々難しいでしょうけれど。
土屋さん:多分最初にBarに行ったのは、東京に出て来て大学の1年の時に、それこそクラブの先輩に連れて行かれた当時新宿辺りで流行っていた箱の大きなBarがあったんだよね。そこで、学生だからボトルキープで、ホワイトかなんかのボトルをキープしながら、よくそこへ行って飲んでいたんだけれど。最初に行った時先輩に「こんなのがあるから」と教えておごってもらったのが、今でも鮮やかに覚えているけれど「レインボー」というカクテルね。
K:レインボー?
土屋さん:正式には別の名前があるんだけれど、リキュールの比重の違いでグラスに七色のリキュールを注いでいくという。あれを見た時に「あー都会だな」と、それこそ佐渡の田舎に育ってね、そういうものを全く知らずに来て、山岳部みたいなところにいてさ、そういう都会の文化を知らなかった。それに俺らは酒を飲むって言うと、山に行ってテントの中で飲むのが関の山なわけじゃない?それなのに東京の新宿のど真ん中でネオンの煌びやかな中でさ、それを見た時にあーすごい世界があるんだなと思ったのは印象に残っているよね。だから当初カクテルってすごい魅かれたよね。
K:そうですか。
土屋さん:それで、バイトで金が貯まると、当時はスナックでボトルキープしていたけど、それ以外にそういう新宿辺りのBarでカクテルを飲むのが楽しみだった。
それで思い出した、新宿で白州というBarがあって、いま思えばサントリー系列なんだよ、当時は知らなかったけれど、その白州というBarのカウンターで俺は初めてドライマティーニを飲んで、これもびっくりしたね。
K:はい。
土屋さん:それは素晴らしいドライマティーニで、俺の印象に残るドライマティーニだよね。でもあまりにも調子に乗り過ぎて、あまりにも美味しいものだから格好つけようと思って7杯飲んで記憶を失った事がある。
K:え?ドライマティーニを7杯も、ですか?(笑)それでもお好きになるとずっと1本でいかれるのですね。
土屋さん:いや、それが格好いいと思っていたから。
K:格好いい?
土屋さん:ドライマティーニを飲む事が格好いいと思っていて、それも白州というBarが格好いいと思っていて、カウンターに座ってバーテンに色々と教えてもらいながら、ギンギンに冷えたドライマティーニを飲み続ける事が格好いいなと思っていた。今思うと、とんでもない話だけど。
K:(笑)、でもBarにはそういう魅力がありますよね?
土屋さん:うん。
K:Barに伺うと、ついつい引き込まれてしまう部分があると思います。(11へ続く) (9へ戻る)
※当時のインタビューのまま掲載、移行しております。
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