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単独インタビュー第5弾 Whisky Concierge 1周年特別企画「カカオ&チョコレートプランナー小方 真弓さんを迎えて」前編

バーフィフティーンにて 2010年4月某日 時刻 雨が静かに降っていた頃」

お陰様で今月5/25で、Whisky Conciergeを立ち上げましてから、丸1年となります。その為今回は特別企画と致しまして、女性限定ウイスキーイベントをご一緒にさせて頂いている「カカオ&チョコレートプランナーの小方 真弓さん」を迎えてインタビューをさせて頂きたいと思います。

Kaori(以下K):それでは始めさせて頂きたいと思います。まずは先日のイベントお疲れ様でございました。

小方さん:お疲れ様でございました。

K:Q1 そちらの事は後でお伺いするとして、まず小方さんのお仕事は、執筆中のコラムをリンクさせて頂いても中々お分かり辛い仕事かなと思いますので「カカオ&チョコレートプランナー」というお仕事について簡単に教えて頂けたらと思います。

小方さん:アクティビティ自体はたくさんあるのですが、主要となっているのはプランナーなので、チョコレートに関わる商品や事業の企画、開発が基本にあります。

 K:はい。

小方さん:その延長上で企画開発したものを販売するスタッフの教育、新しいカカオを日本の市場に紹介するということも事も行っています。コラムの執筆も同じ延長上にあります。

 K:はい。

小方さん:職業名というのは、本来その職業を表すものだと思うんですけれど、私の場合には職業名の中にちょっと入らないカテゴリーもたくさん持っているというのが現状になります。

K:企画開発が基本でいらっしゃって...

小方さん:そうですね。企画開発が1番の核で、その追随として次にスタッフ教育、それからコラム執筆、マーケティングなどが続きます。マーケティングに関しては、カカオ豆からチョコレートまで一連の流れを全て行っている形になりますね。

K:有り難うございます。 カカオプランナーになられてから、10年?

小方さん:7年ですね。

K:でもショコラのお仕事に携わってからは?

小方さん:13年。多分ショコラに携わる方は、まずショコラに触れる事から始める事とが多いですけれど、私の場合は幸いにしてカカオ豆から原料チョコレートに仕上げる仕事に携わっていたので、それは大きいですよね。更に原料チョコレートから最終商品を作っているお客さんの商品作りにも参加させてもらっていたので、「カカオ豆から原料チョコレートを作る」段階と「原料チョコレートから商品を作る」段階の2段階を勉強出来たことがショコラティエの仕事をされている方とは違う部分かな、と思います。

K:確かにそうですよね。色々なお仕事があるとは思いますけれど、ショコラを最初美味しいなと思って普段買われるようになったりして、その後興味を持って、という方も多いと思うのですが、最初からカカオの豆から入られているという方は中々いらっしゃらないですよね。

小方さん:言い方を変えると多分、反物を絹などの原料から、あるいは繊維から知った上で仕立て、仕立てた反物をちゃんと縫合して着物にする迄の一連の作業をやって来たような流れが、チョコレートの仕事としての土台となっていると思います。

Q2:そして、ショコラのお仕事に携われたいと思われたきっかけですが、Q1の内容にかかわって来るかと思うのですが、カカオ&チョコレートプランナーのお仕事をされたい、と思われたきっかけがありましたら教えて頂きたいなと思います。

小方さん:原料チョコレート業界に入って最初の2年間はチョコが好きではなかったです。正直そんなには。お客様の前に出て、直接チョコレートの話をする様になってから、やはり知らなければ話せないし、理解していなければ何も伝えられないし、と感じたことが根本にあります。ただ企業の仕事はあくまで利益の追求が理念にありますが、原料となるカカオを生産している人たちというのは必ずしも業務上のプロセスの中に登場してくるかというとそういう訳ではないんですよね。もの作りは料理と一緒で、何かを作るには原材料を知ることが重要だし、同時に生産者を知ることが重要だと思います。チョコレートは加工商品なので中々そういう生産者が見えないんですけれど、見えないからこそ知るべきだと思うし、知ったからこそ伝えたいという事を自分の中で感じ始めました。そんな経緯で会社を辞めて独立。今の仕事は未来の「やりたい事」のために自分の「出来る事」を根本から問い詰めて辿り着いた結果論。どういう名前をつけようか、「プランナーって、付けちゃおうっかな」(笑)みたいなところはありますけどね。

K:はい(笑)。

小方さん:私にとってこの名前は自分の「出来る事」を基準にして付けた名前ですが、今の私はその名前でなくても良いと思っています。

K:はい。

小方さん:むしろ原産国に行く機会が増え、原産国の事をより知って、現在ではプロジェクトを立ち上げて新しい事を現地でやろうとしてしています。企画開発より生産の方に近い内容にチャレンジいているので、今の職業名でなくても良いのかなと感じています。

K:それでしたら、もし考えられるとしたらどういう職業名を思い浮かべられますか?

小方さん: 「カカオハンター」(笑)。

K:(笑)

小方さん:「カカオハンター」とは、雑誌の対談をコーヒーハンターの方としたときに編集社の方が付けて下さった名前ですが、多分その呼び名の方が今の私の仕事にとっては近いのだと思います。

 K:そうですね。

小方さん:お金を頂戴する仕事としては企画開発がメインですけれど、自分のモチベーションの核や理念の中心は、やっぱりカカオの原産国に近い位置にあります。

K:はい。

小方さん:改名もありだと思っています。

K:そうですね。

小方さん:「海砂利水魚」が「くりーむしちゅー」になった様に。

K:(笑)そうですね。 確かその方達は、何か失敗したかで名前を変えられたのですよね?

小方さん:そうそう。

K:でも小方さんの場合は、そうではなくて、自らですものね。

小方さん:方向性が変わった訳ではなく、元々やりたかった事に段々出来るようになって来た。自分が描いていたものに実力がついていけるようになって来て、その結果違う名前になってもいいんじゃないかなと思うようになって来ましたね。

K:本当にそうですよね。小方さんと知り合わせて頂いたのが、もう5年、6年程前ですものね。

小方さん:そうですね。

 K:ですからその時ずっとお話を伺っていて、又定期的にお会いさせて頂く様になって、色々とご活躍を伺ったり、拝見していると、なんとなく今の私のイメージも小方さんはカカオプランナーというより...

小方さん:ハンター。

K:という印象が出て来てしまっていますよね。

小方さん:昔の私はハンターという名前は、付けられなかったんですよ。そこまで精通していなかったし、原産国に足を運んでもいなかったし、踏み込んでもいなかった。

K:いつかはもしかしたら変わってしまうかもしれない。

小方さん:出生魚になっているかもしれません。名前が変わるじゃないですか。それと一緒で何かに近付くにつれて変わっているかもしれない。でも私は変わっていいと思っているので。

 K:はい、そうですね。

小方さん:職業名に固執する必要はないでしょう。

 K:確かにそうですよね。 

小方さん:あとは自分が肯定するかしないかだと思うんですよ。職業名を変える事を肯定しない人もいるだろうし、あえて変わっていく自分を肯定する人もいるだろうし。 

K:例えが良いか悪いか分からないですけれど、北野武さんもそうですものね。お笑いを最初にされていて、その後俳優さんになったり映画監督になったり、でも元々お笑いのところがあるからどこかで外す部分もあったり。最初の出がそうであっても変わっていく事を否む必要はないですよね。 

小方さん:大体自分でくっつけた名前なんだから、誰かが付けたわけではないし変えちゃっても良いと私は思っているんですよ。 

K:確かに。有り難うございます。

K:Q3次の質問ですが、ウイスキーは土地、水、気候が大切だと言われていますが、カカオにとって必要な条件とは何でしょうか?

小方さん:最終的にチョコレートの味作りに大切なのは、「カカオの品種」、「環境」、これはさっきのウイスキーと一緒です。水もそうですし、それと土壌ですよね。「環境」のカテゴリーの中には“気候”、“標高”、更にカカオの陰木・陰を作るシェードツリーによる“日照条件”も大きく影響します。それに「発酵」と「乾燥」。原産国で必要なのは、この4つ。主にですよ。

 K:品種、環境、発酵、乾燥の4つ。

小方さん:プラス、チョコレートとして大事なところになると、今度はチョコレート生産国でのカカオ豆の「焙煎」、チョコレートのコンチングと呼ばれる「精錬(練る)」作業、この2つですね。

 K:はい。

小方さん:この6要素が大まかに絡んで初めてチョコレートの味になります。

 K:6つ。

小方さん:原産国で4つ、生産国で2つ。他にもいっぱいありますけれどね、条件としては。

K:はい。

小方さん:ただ細かい事を挙げるときりがないので、6つの大分類に分けました。

農産物ですからね、基本。ウイスキーと変わらないです。チョコレートになると別物だと考える人がすっごく多いんですけれど...。 

K:ええ。

小方さん:やっぱり農産物です。食べ物である以上。

 K:丁度良かったです。Q4の質問が、チョコレートとウイスキーの共通する部分はございますか?とお伺いしようかと思っていたのですが、その際は農産物という事と...

小方さん:ウイスキーも発酵させますよね。ウイスキーは蒸溜するので、基本アロマを頂くものだと思いますが、チョコレートの場合にも発酵・乾燥・焙煎という工程を得て500以上の香りの成分が出来上がるのですよ。

 K:500ですか?

小方さん:500以上と言われています、一般的には。勿論各工程の良し悪しでその数が減ったりというのはあるんですけれど。やっぱりアロマなんですよね。

 K:ええ。

小方さん:その上でテイストが入って来ます。チョコレートはモルトと一緒でアロマティックなものもあれば、いやテイストの方が強いというのもあります。

K:ええ、そうですよね。最初に小方さんにショコラを教えて頂いた時に、「アロマを大切にする」、「最初にアロマを探る」というお話に「ショコラとは、そうなのだ」と思ったのが、1番の感想ですね。

小方さん:チョコレートの香味というと一般的には苦い、甘いとかだと思うんですよね。

 K:そうですね。そういう感覚だったのが、最初にアロマと伺った時に「そうなのだ」と思って、ウイスキーもアロマだったので、アロマは本当に大事なのだなと思いました。

小方さん:そうなんですよね。やっぱり多分多くの日本人の方、日本人だけじゃないんですけれど多くの方の中にチョコレートはまずもって甘いか苦いかという認識が多いと思うんですよ。それはごく当たり前な考え方です。ただチョコレートの中には様々なアロマが含まれていて、それが豆の品種や生産地によって個性を持つというのが今迄あまり知られていなかったのです。

K:違いますものね。

小方さん:日本はまだまだテイストとアロマを探しながら食べるという食べ方が浸透していませんが、ヨーロッパだとワインと一緒でテイスティングを楽しむ人が多いです。ワインの文化があるところは香味を探りながら食べ進めるかたちが浸透しやすいんですよ。

 K:ええ。 

小方さん:素材の個性を感じながら、頂く。そういった方が分かり易いですかね。 

K:素材の個性を感じながら頂く...はい。 

小方さん:日本人は元々そういうのが得意だと思います。ワインではごく一般的で、コーヒーでもそういった飲み方が根付いてきましたけど、チョコレートにはそういうカテゴリーが浸透していなかったのです。

 K:そうですね。

小方さん:その部分を飛び越えて、「~シェフの作ったショコラ」だとかそちらの方に流行が先に行ってしまったんですよね。

 K:そうですね。又、そこから興味を示される方もいらっしゃいますよね? 

小方さん:たくさんいらっしゃいますよ。

 K:素材の個性を感じながら、頂く。こう頭の何処かで感じていながら気付いていたかもしれませんが、言葉に出されるとすごく分かり易いですね。 

小方さん:日本人は日本酒を飲んだ瞬間にフルーティだ、いい香りがするだとか、米の味わいがするといったものを敏感に感じる、味覚に繊細なタイプだと思います。

K:そうですね。 

小方さん:だから素材に向き合ってチョコレートを頂く文化が浸透したら、もっと面白いと思います。 

K:そうですね。 

小方さん:それは全然ウイスキーとなんら変わりはないです。全く一緒です。嗜好品ですから。

K:そうですね。

小方さん:ウイスキーも、日本酒も、コーヒーも嗜好品のカテゴリーだからこそ、その五感で感じる重要性が増すと思うんですよ。ただ食べて栄養として摂るのではなく、その楽しみを享受するものであると思うんです。

K:Q5 有り難うございます。ウイスキーは簡単にまとめてしまいますと、製麦して、仕込みをして、発酵して、蒸溜して、貯蔵という段階がありますけれど、ショコラが出来るまでの工程を教えて頂けたらと思います。先程と被ってしまうかもしれませんが。

小方さん:カカオはフルーツなので、まず果実をもぎます。果実の中に種と白い果肉があるので、それを取って一緒に発酵させます。発酵させるには3つ理由があります。1つは種ですからそのままだと発芽してしまうので、発酵させて作る事によって発芽を食い止めます。2つ目の理由はチョコレートの香りの元になるものをつくる事。3つ目は果肉と種の間には繊維質が多くて種が外れにくいので、発酵させる事によって果肉を取り除き、種だけを取り出します。次に発酵させたカカオの種を乾燥させます。きちんとした方法で乾燥させるとアロマが熟成されて行くので、焙煎した時に美味しい香りとなります。発酵で生じる余分な酸の一部を乾燥時の水分の蒸散とともに揮発させる効果もあります。

K:はい。

小方さん:難しい事は抜きに、要は発酵させないと美味しいチョコレートにはならないという事ですね。乾燥させ種がカカオ豆となったら、今度はチョコレート生産国でこれを焙煎をします。モルトの焙煎と一緒ですね。焙煎して、アロマとテイストを作ります。それから実を細かくします。これは工程が逆になり細かくしてから煎る時もありますが、どちらにしてもこの工程を得て、細かく擂り潰していきます。

K:はい。

小方さん:細かくしたカカオに砂糖を入れて、もう1回細かくします。

K:はい。

小方さん:胡麻ペーストを1回作ってこれに砂糖を加えて、もう1回擂ると思って下さい。感覚としてはそれが1番近いと思います。

K:有り難うございます。

小方さん:意外と工程が多いんです。

K:そうですよね。 

小方さん:カカオの果実からカカオ豆になる迄にも時間が掛かります。最低10日くらいでしょうか。

 K:はい。

 小方さん:カカオ豆が原産国からチョコレート生産国に着く迄は、船で輸送させますから1カ月から2カ月程掛かってしまいます。

K:船にゆらゆら揺られて来るのですものね。

小方さん:その後倉庫での保管を経て、カカオ豆を煎って煉った後にチョコレートになるのですが、チョコレートにした後に熟成もさせるんですよ。

 K:チョコレートにした後、熟成もさせますか?

小方さん:樽で寝かせている様なものですよね。 

K:そうですよね。

小方さん:やっぱり熟成させる事によってアロマが落ち着いてくるのと、チョコレートの場合にはスナップ性と私達は言うのですが、要するに硬さが安定して来るんですよ。

 K:ええ、ええ。

小方さん:作り立てって微妙に柔らかいんです。それを安定させる事によってあのパキッとした触感が出て来るので、結構時間が掛かります。 

K:そうですね、お時間が掛かりますね。(後編へ続く)


※当時のインタビューのまま掲載、移行しております。

但し、こちらでのサイトでの公開は、現在携わっていらっしゃる方のみにしております。

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